社会人が大学受験をする方法 選択肢や入試の条件、メリット・デメリットとは?
最近では社会人でも大学に行くという動きが年々増加しています。学び直しや新たな得意分野を身につけるなどのメリットもありますよね。入試方式も、高校生たちと横並びで受験する「一般入試」だけではなく「社会人入試」もあります。
大学に行きたいけどという意欲はあれど、仕事や家庭が…と、何かと不安要素なども出てきてしまうもの。しかし、仕事を続けながら学べるような「通信制」「夜間部」といった制度も存在しています。
これらを詳しくご紹介していきますね。
実は多くの社会人がチャレンジする大学受験
主婦、会社員、芸能人まで実にさまざまな社会人の方が大学受験を受験し、学び直すことにチャレンジしています。
理由は様々でキャリアアップのために学びたいことがあるという方もいれば、過去に勉強が苦手だったことを後悔して学びなおして自分に自信をつけたいという方もいます。
ロンドンブーツ1号2号の田村敦さんも慶應義塾大学の通信制課程に合格した後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に通われています。
家庭を持ち、様々な番組出演など多岐にわたる活躍をするという多忙な中、大学での学びを決意されてきたひとつの理由は「今まで学んでこなかったことを後悔している」ことだそうです。
社会人で大学に入るメリットとは?
大学に入るメリットのひとつには『実際に専門的な勉強をする環境』を手に入れることが出来ます。それは、生きてきて疑問に思ったことや仕事に使えそうなことかもしれません。広く浅く学ぶのではなく、興味があることを、専門的な知識を持った方々から学んだり、共に研究することも可能です。
また、「学歴」も手に入ります。実際に大卒かどうかなどは働き口の幅を広げますし、現実問題として仕事での待遇が良くなることも少なくありません。だから学歴を手に入れて人生を変えたいと考える方もいるでしょう。
そして、勉強が苦手だったという方でも、改めて大学受験のために頑張って勉強をすることで、「自分にも出来る」という自信や、「合格するまで勉強が出来た」というがんばった証明書にすることだって出来ますよね。
社会人の大学受験にはデメリットもある
一方でデメリットもゼロではありません。勉強と仕事を両立することはとても大変です。大学受験に合格するだけの勉強時間を働きながら確保するのは容易ではないからです。もちろん合格している方もたくさんいますが、遊んだりする時間はないものと思って覚悟して取り組む必要もあるでしょう。
仕事をやめて受験や大学での学びに集中するのであれば、一時的にキャリアや収入が止まることも考えておかなければなりません。さらには、仕事に復帰するにあたって、以前と同じような環境が手に入るかはわからないということも考えておくべきでしょう。
ただし、受験においては社会人選抜やAO入試という選択肢もあります。また私立大学を選べば一般入試でも受験科目は2〜3科目まで減らすことが出来ます。
また、入学する先も「夜間部」や「通信制」などもあり、働きながら続けることができるような選択肢もあるので、そのあたりも踏まえて判断するのが良いでしょう。
代表的な選抜形式の特徴と対策
社会人の大学入学試験においては、大きく3種類の選抜方式があります。①社会人入試②AO入試③一般入試 です。一般入試は試験を受けて合否が決定するものでイメージが付きやすいと思いますが、それぞれの特徴やメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。
①社会人入試
社会人入試とは?受験科目や対策の傾向
社会人入試は、仕事を続けながらでも学びたいという社会人向けの選抜方式です。受験科目が少なく、書類・面接・これまでのキャリアなどが評価される傾向にあります。
受験科目が少ない分負担は減りますが、意欲や目的、これまでの経験が重視される選抜方法となっています。
例えば、中央大学商学部では、小論文、外国語、面接による選考となります。教科をみれば実質外国語の1教科のみです。
一般入試の場合は同学部では、外国語、国語(現代文と古文)、そして地理・歴史・公民・数学から1科目選択する計3教科の学習が必要ですから、大きな差があることがわかります。
キャリアや経験を重ねてきて、なおかつ大学に行く目的が明確に伝えられる方にとっては、社会人入試は良い選択肢になるでしょう。
社会人入試の注意点と難易度
一方で注意点もあります。
それは、大学のすべての学部に社会人選抜が用意されているわけではないということです。
前述の中央大学ですと商学部にのみ社会人選抜があります。また、上智大学だと総合人間科学部社会福祉学科と同学部看護学科のみが対象です。
明治大学ですと文学部のみに社会人特別入学試験という名前で設置されている制度です。
行きたい学部に社会人入試が用意されていない場合は、AO入試か一般入試を受けるしかありませんので、事前に調べて判断しましょう。
また社会人入試の場合、人気の学部等では倍率が高すぎてハードルが高くなることもあります。また、キャリアや経験に自信がない方にとっては難しい選抜方法になる可能性もあると理解しておかなければなりません。
②総合型選抜(AO入試)
総合型選抜(AO入試)とは?
AO入試(=アドミッションズ・オフィス入試※アドミッションズ・オフィス=入試事務室・入試管理局)という名前で知られるこの制度ですが、現在では総合型選抜と呼ばれています。
合否判定は、アドミッションポリシーと呼ばれる「大学が求める学生像」に合致するかが基準となり、学力試験などがほとんど重視されません。
現役生だけではなく浪人生や社会人の受験を認めている大学も多くあります。
いま勉強ができるかどうか?ではなく、自分自身がやりたいことや大学で学びたいことを強く持っているかを重視されており、選考は書類や面接を中心に個性、適性、熱意等を見極め合否を判定されます。
学力試験は不要ですが、一方で合格基準が明確に存在しているわけではないので、明確な対策が立てにくいといえます。
総合型選抜(AO入試)の注意点と難易度
注意すべきは、学力は重視されないかもしれないが、相応しいと大学側が考える学生が選ばれるということ。口だけの「意欲や目的意識」ではなく、それに相応しい経験や活動をしていたかが見られるとも言えます。
合格しやすさという点では、一般入試とさほど変わらないと考えて良いでしょう。
多くの大学で総合型選抜の倍率は低くなっていますし、学力試験もないので合格しやすいと考えがちです。
ところが、そもそもの募集人数が一般試験の1/10程度であるということと、合格率は、大学によるが一般試験とさほど変わりません。
一般試験の場合は募集人数に対して多めに合格者が出ることもありますが、総合型選抜の場合は、合格者数が募集人数を下回ることも少なくありません。
③一般入試(一般選抜)
一般入試(一般選抜)とは?
原則、学力試験で合否が決まる入試方式です。
大学によって形式は異なりますが、大きく分けて3つのパターンが用意されています。
・共通テストで合格が決まる
・大学の用意する独自試験のみで合否が決まる
・共通テストの点数と大学の独自試験で合否が決まる
※基本的には学力試験ですが大学、学部等によっては面接などが必要になるケースもあります。
一般に、国公立大学と私立大学では課される試験の形式が大きく異なっています。
国公立大学の場合の傾向と入試要項例
多くの国公立大学は共通テストで5教科と、個別学力試験(二次試験)と呼ばれる大学の独自試験を1〜5教科受験します。その合算の点数で合否判定されています。
愛媛大学 工学部 前期日程
共通テスト | 5教科7〜8科目 計600点満点 |
個別学力試験 | 数学と理科 計450点満点 |
二次試験配点比率 | 43%(共テ600点+二次450点=1050点満点) |
東京大学 文科Ⅰ~Ⅲ類 前期日程
共通テスト | 5教科8科目900点満点 ※点数を110点満点に換算する |
個別学力試験 | 4教科5科目 計440点満点。 |
二次試験配点比率 | 75%(共テ110点+二次440点=550点満点) |
愛媛大学と比べて東京大学はより二次試験での点数が重いことがわかります。
こういった傾向は大学によって異なりますので、募集要項等を確認してください。
私立大学の場合の傾向と入試要項例
一方で私立大学は、独自試験のみの入試と共通テスト利用入試に分かれ、概ね2、3教科の受験で合否判定されます。
独自試験のみの場合は、大学独自の試験を受けて合否判定されますが、共通テスト利用入試には「単独型」と「併用型」の2種類があります。どちらなのかは大学によって異なります。
共通テスト利用入試の2パターン ・併用型…独自試験に共通テストの点数を加味して合否判定する ・単独型…共通テストの成績のみで合否判定する
また、英検などの外国語検定の得点を使うことが出来るケースもありますので、募集要項などをあらかじめ確認して対策を立てましょう。
慶應義塾大学経済学部 3教科(420点)
A方式 | 数学(150)+外国語(200)+小論文(70) |
B方式 | 地歴(150)+外国語(200)+小論文(70) |
慶應義塾大学商学部 3教科(400点)
A方式 | 地歴(100)+数学(100)+外国語(200) |
B方式 | 地歴(100)+外国語(200)+小論文(100) |
早稲田大学法学部 3教科(150点)
国語(50)+外国語(60)+選択(40) 選択は、地歴or公民or数学から1科目 ※数学は共通テスト利用 |
同志社大学文学部 3教科(500点)
国語(150)+外国語(200)+選択(150) 選択は、地歴or公民or数学から1科目 |
私立大学の方が科目数が少なく対策がしやすくなるが、難関大学になると科目数が絞られる分、マニアックな高難度の問題が出ることがあります。
④社会人編入学試験
大学卒業資格や過去に中退した人で在籍時の単位を活かして、大学に入学する制度です。1年次からやり直す必要はなく、2年次、3年次から入学できるので、卒業までの期間が少なく済みます。
各大学が求める学歴や単位数があれば受験が可能です。
受験に必要な科目は小論文や面接などが中心で、各教科の勉強の負担は少なくなります。
ただ、募集人員が少なく合格難易度は比較的高めだと考えておいたほうが良いかもしれません。
昼間に通うだけじゃない!多様な授業開講方式
全日制(昼間部)、夜間部、通信制、昼夜開講制、といった選択肢があります。
夜間部や通信制は昼間部と違い、入学試験、学費等においてハードルが低く設定されており、必ずしも日中に大学に通う必要がないため、働きながらでも通いやすいというメリットがあります。
一方でデメリットもあり、すべての大学や学部に夜間部や通信制が設置されているわけではありません。そのため、希望する大学・学部・分野に夜間部や通信制が存在しないことも考えられます。
また、通信制や夜間部は学び方の柔軟性においては優れていますが、卒業するために学ばなければいけないことや、出される課題は概ね同じです。卒業が楽になるわけではないことには注意が必要です。
昼間部・夜間部・通信制 は何が違う?メリット・デメリットは?
昼間部はいわゆる一般的な大学のイメージ通り、日中に大学に通って講義を受ける形式のものです。日中通うことになるので、基本的には学業に専念してじっくり学ぶ心づもりで入学する必要があります。その分、しっかり取り組めば、多くの方が4年間で卒業できます。
それに対して夜間部や通信制は受講や単位取得の方法が異なります。
夜間部の場合は、夕方以降に通学をして授業を受けます。
通信制の場合ですと、は自宅で通信講座、放送授業、教室での講義などから選択して学ぶことが出来ます。※一切の通学が不要という大学も増えているようです。
時間に融通が効きやすく、学費も比較的安く、仕事をしながらでも続けやすい環境であることから社会人でも取り組みやすいのが何よりの利点です。
また、昼間部に比べ、学生の年代から社会人までいろんな年代の人が入学しますので、様々な方と交流が出来るのも魅力です。
その大学の学生としての扱いになりますので、使いたい場合は学校の図書館などの施設を使えますし、学割なども使えます。
一方で、最大のデメリットは入りたい学部が必ずしも学べるわけではないということ。例えば慶應義塾大学の場合は文学部・経済学部・法学部しか通信制課程では学ぶことが出来ません。
通信制課程の場合
通信制の場合は特に自発的に学ばなければなりません。卒業単位を取るためにも、自ら計画的に勉強する必要があります。
通信制大学卒業まで、4年ですんなりとはならず、6~8年かかるケースが多いようです。学校基本調査によると、通信制大学の平均卒業率は毎年15%となっており、10人中1〜2人しか卒業できていないのが実態です。(4年制大学通学課程の卒業率は約90%)
また学費は全日制と比べると非常に安価に設定されていることも魅力のひとつです。
例)中央大学の通信制と全日制の学費比較
全日制 | 初年度1年間で 130万円程度 |
通信制 | 2年間の学費目安 27万円程度 |
※全日制の学費:https://www.chuo-u.ac.jp/academics/fees/student/faculties/
※通信制の学費:http://www.tsukyo.chuo-u.ac.jp/admission/guide/cost/regular/
また、ほとんどの大学で入学試験がありません。出願書類の書類選考のみというケースが主。
通信制の場合は入試も基本的に不要。学びたい気持ちさえあればチャレンジが可能です。
テキストや映像講義を中心に、その他にもスクーリングと呼ばれる実際に教室での授業を一定数受けながら単位を取得していきます。最近では、スクーリングが不要な大学もあるようですが、希望する大学の詳細を調べて自分に合っているか判断しなければなりません。
通学の負担が少なく、自分のペースで勉強ができるというメリットがある一方で、自発的に日々計画的に取り組まなければ卒業までの単位取得が出来ず、卒業までに長い時間がかかってしまいます。
通信制課程が設置されている主な大学
・慶應義塾大学 ・日本大学 ・佛教大学 ・法政大学 ・中央大学 ・近畿大学 など |
夜間部の場合
基本的に夕方〜夜間に通学して講義を受ける制度です。実施している学部や学科が少なく選択肢は限られてしまいます。ただカリキュラムや内容は基本的に昼間部と同じものを受講することが可能です。
もちろん、卒業単位を取得すれば学部を卒業できるため「●●大学★★学部卒業」という肩書を得ることもできます。
学費は全日制(昼間部)と比較して安価に設定されていることがほとんどです。
例)日本大学の夜間部と全日制(昼間部)の学費比較
法律学科 昼間部(第一部) | 初年度129万円 |
法律学科 夜間部(第二部) | 初年度74万円 |
日本大学法律学科学費について:https://www.law.nihon-u.ac.jp/guardian/tution.html
通学が基本のため、さまざまな年代の方と交流することも出来ますが、サークルなどの活動を望むのは難しいかもしれません。
また仕事を続ける場合は、残業等で遅くなったりすると授業を欠席しなければならないといったことも出てきますので、ご自身の状況を踏まえて選択する必要があります。
夜間課程(夜間部)が設置されている主な大学
・日本大学 ・駒沢大学 ・國學院大學 ・東京理科大学 ・電気通信大学 ・東洋大学 ・山形大学 ・茨城大学 ・富山大学 ・岡山大学 ・広島大学 ・徳島大学 ・香川大学 ・近畿大学福岡大学 など |
昼夜開講制の場合
昼夜開講制の大学もあります。昼間の時間帯だけでなく、夜間の時間帯も講義を受けられます。
昼に講義を受けたり、夜に講義を受けたりとフレックスな通い方が出来るので、働きながら通いやすい選択肢のひとつです。
受けられる講義については、科目や分野の選択肢が少なくなる傾向にありますが、内容・中身は全日制と変わりません。また学費も夜間部と同程度で全日制と比較しても費用を抑えられる大学が多いです。
昼夜開講制(二部制)が設置されている主な大学
・山形大学 ・岡山大学 ・広島大学 ・徳島大学 ・香川大学 ・愛媛大学 ・琉球大学 ・大阪経済大学 ・近畿大学 ・福岡大学 ・駒沢大学 ・中央大学 ・國學院大學 など |
科目等履修生・聴講生
科目等履修生・聴講生という制度もあります。
これは大学に入学するのではなく、学びたい好きな科目だけを選んで履修することが出来ます。
一部の科目の単位だけ取得したい方や、興味がある分野の勉強だけできればよいという方にはおすすめです。
まとめ
実は多様な選択肢が大学にはありますので、社会人が大学行きたい!と思った場合でも、いろいろな方法が考えられます。
ですので、まずは
・大学に行く目的
・受験勉強にどれくらい時間を割けるのか
・入学後に仕事はどうしたいのか?
・かけられる費用はどのくらいか?
・現状の学力や知識
・これまでの知識、経験、キャリア
などを明確にし、自身の希望と状況を踏まえて選択するのが良いでしょう。
蒼立アカデミーでは社会人の大学受験についても取り扱っています。
・大学に行きたいが自分に合った選択肢がわからない
・一般入試で合格するための勉強法を教えてほしい
・勉強が苦手でも成績を上げられる授業を受けたい
といった方は、ぜひ一度ご相談ください。
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